その随所に鎌倉時代の栄華の名残がある鎌倉。地中にはまだまだ貴重な文化財が埋まっているため、建物を建設するときには注意が必要です。

鎌倉ではあちこちに土器などの文化財が埋まっていて、そこを「埋蔵文化財包蔵地」と呼んでいます。
また住居跡などの遺構が埋まっているところもあり、ここは「遺跡」と呼ばれます。
そして「史跡」とは、ざっくり言えば、その遺跡のうちで特に学術上価値があるもののこと。
(詳細は文化財保護法第109条による)。これらは歴史を理解するための貴重な資料です。
その学術上価値が高い地域は「史跡エリア」として指定され、「埋蔵文化財包蔵地」よりいっそう厳しい規定が設けています。史跡エリアで建築工事等を行う場合、①鎌倉市教育委員会(市)→②神奈川県教育委員会(県)→③文化庁(国)という、3重の関門を突破して許可をとらなければいけません。

鎌倉市には31箇所の国指定史跡(県市指定を含めればなんと42箇所も!)もの史跡があります。
有名どころだと、その昔に鶴岡八幡宮境内だったエリア、北条氏邸宅跡だったエリアなど。
とくに寺社仏閣のそばにたくさんあるわけです。

というわけで史跡は、鎌倉市内でも特に歴史的背景が色濃い場所にあたります。
史跡で建物を建てる場合は、その景観をリスペクトする理由で現況の環境が大きく変わってしまう建物はつくれません。
ではまったく建物が建てられないのか。というとそういうわけではありません。
史跡エリアで建物を建てるとき、もっとも重要なのが「そこが過去に建物が建っていた土地かどうか」です。

過去に建物が建っていた、もしくは既存建物がある場合、「新しく建てようとしている建物」が、「その昔に建っていた建物」や「いま建っている建物」と同じくらいの大きさならば、比較的許可されやすい傾向にあります。
(逆に過去にも建物が建っていなかった土地では、原則NGになります。)
その「同じくらいの大きさ」というのがどういう感覚かと言えば、例えば既存建物が木造2階建てであれば、新しい建物も木造2階建てとする必要があり、3階建てではNG。建物面積も数平米程度のちょっとした増加であればOKだけど、極端に数十平米も大きくなるならNGがでる可能性あり。というニュアンスです。

そして「新しく建てようとしている建物」は、「新しく建てようとしている建物」は、「その昔に建っていた建物」や「いま建っている建物」と、およそ同じ位置に建てるなら、比較的許可されやすい傾向にあります。それは新しい建物が現況の環境を大きく変えてはならないという前提があるためです。
その「およそ同じくらいの位置」というのは、新しい建物の位置が、もともと既存建物があった位置と1M違う程度であれば、許可される可能性あり。くらいの感覚です。

用途についても考え方は同じです。
既存建物の建物用途が住宅で、新しく建てる建物も住宅であればほぼ問題ありません。
とくに老朽化した建物を、オーナーが自ら暮らす住宅として建て替えたり改修するのであれば、まず間違いなく許可が下りるでしょう。
しかし既存建物が住宅で、そこに新しく営利目的の店舗を建てる場合には、NGとなる可能性があります。これは既存建物を残して用途変更する場合でも同様です。
こういったケースでは、兼用住宅(店舗と自宅を兼ねた建物)というプランで市に相談してみましょう。一般住宅に比べれば厳しい審査となりますが、絶対ムリというわけではありません。

そして構造形式にも注意が必要です。
まず新しい建物が木造の場合。一般的なベタ基礎で、根切深さが60cm未満で納まる計画であれば、スムーズに許可が下りるでしょう。
しかし新しい建物がRC造や鉄骨造の場合。文化庁の判断次第となるため、兎にも角にもまず市の文化財課に相談しましょう。昨今のレッドゾーン(土砂災害特別警戒区域)の拡張で、安全のためRC造としなければならないケースも多くなりました。史跡とレッドゾーンがダブルで影響する土地は要注意です。
もし深基礎や地盤改良などの構造物で地面が60cmより深く掘削される場合、実際に現地の一部を試し掘りすることになります。これを試掘調査といいます。
史跡の場合は埋蔵文化包蔵地での試掘とは違い、試掘でもかなり大がかり。
建物を建てる地面から2~3ポイントを選抜します。そして各調査ポイントで2×3mほどの範囲を、計画の構造物の深さまで調査します。本掘(本番の発掘調査)ではありませんが、それでも2~6カ月ほどかかることも。
ただし、もしも計画していた構造物の深さよりも、浅い位置で文化財が発掘されてしまった場合、それ以上深く掘ることはできません。掘削深度が浅くなるよう建物の計画自体を変更しなければいけません。
また忘れがちなのですが、既存建物の解体工事や埋設配管の改修、地盤調査などであっても事前許可が必要なので注意が必要です。

このように史跡のルールは複雑です。
史跡に建物を建てる場合は、まずは鎌倉市役所の文化財課に事前相談することをおすすめします。
事前相談には、地図・土地の現況図と現況写真・既存建物の図面・計画建物の配置図と断面図があればOKです。
先方がチェックしたいことは、新しい建物によって現在の敷地状況がどれだけ変わるかです。
資料をすべて揃える余裕がない場合は、まずは現況図と計画建物の配置図だけで、ざっくり相談してみてもよいでしょう。
鎌倉市の文化財課に事前相談を行うと、後日、神奈川県教育委員会に情報がまわります。
この県教育委員会から内諾を得るまでに少なくとも2週間以上かかります。
その後さらに文化庁の協議会で審査されて、問題なければ許可が取得できます。
ただしこの協議会がなんと月に1回しか開会されません!
タイミングが悪いと鎌倉市に相談してから許可取得まで2ヶ月待つこともあります。
ようやく許可を取得できたらいよいよ着工。
根切工事を行った時点で市に現地確認をしてもらいます。
現地確認後に終了報告書を提出して、手続き完了です。
このように史跡のルールは複雑です。
史跡に建物を建てる場合は、まずは鎌倉市役所の文化財課に事前相談することをおすすめします。
事前相談には、地図・土地の現況図と現況写真・既存建物の図面・計画建物の配置図と断面図があればOKです。
先方がチェックしたいことは、新しい建物によって現在の敷地状況がどれだけ変わるかです。
資料をすべて揃える余裕がない場合は、まずは現況図と計画建物の配置図だけで、ざっくり相談してみてもよいでしょう。
お読みいただいてありがとうございました!鎌倉で初めて建物を建てるような業者では面食らってしまうような、はっきり言ってかなり労力のかかるプロセスです。
それでもこの歴史をリスペクトして、正しいプロセスで建物をつくることを怠ってはいけないのです。
詳しくは下記のリンクよりご覧ください。
史跡・周知の埋蔵文化財包蔵地にかかる届出・申請の手引き
邸宅巣箱チーム一同