鎌倉011
境界の朧げな出現
鎌倉某所の寺院の境内の一角に建つ、庫裏の計画である。開山の祖が雨乞いの祈祷を行っていたという寺院の由来を紐解き、庫裏全体に雨という主題を通した。敷地環境に応答するように平家建ての切妻屋根を雁行配置させ、庫裡と境内の境界には、極薄のスクリーンを施すことで、限りなく物体感のない仮想の境界線を設ける。晴天時、物質感の希薄なスクリーンは、雨天時にはスクリーンを雨水が伝うことで、一転して物質然とした振る舞いを始め、視覚的にも明確な境界線が出現することとなる。スクリーンを伝った雨水は、土中改良をもたらす水源となり、境内全体の環境改善を試みている。晴天・雨天で様相の異なる境界線が、開山の祖の思想を人々に伝え、かつてあった豊かな環境を境内にもたらす恵の雨としての建築となることを試みている。


