BEFORE
優れたリノベーションとは、既存家屋から残すべきものと変えるものを見極め、その絶妙なバランスを導き出すことにある──と邸宅巣箱は考えています。
AFTER
言いかえれば、長い年月によって醸成された価値を最大限に引き出し、次代に継承する一方で、古さゆえの問題点には丁寧に手を入れ、現代の感性をもって変えるべきところは大胆に変える。両者の〈相互扶助関係〉と美しい〈調和〉を生み出すことが鍵になります。
そこには、ハッとするような魅力ある世界観を描くセンスとデザインの力、そして緻密なディテールへの追求も欠かせません。
邸宅巣箱が出会ったのは、鎌倉・材木座にぽっかり開けた300坪の土地に建つ、築90年のお屋敷。
街の喧騒から程よく離れ、大きな庭と水平に伸びる平屋の佇まいには、独特な非日常感が漂っていました。 この家の格式高さと風情は後世に残すべきものだ──というのが初見での印象でした。
一方で経年劣化による雨漏りや腐食、滞留する湿気や耐震の問題、現代のライフスタイルにそぐわない内装など、アップデートが必要な箇所も多くありました。
こちらの事例は別荘や民泊としての用途が見込まれており、土地と建物に漂う〈非日常感〉を価値として継承し、さらに高めることを意図しました。
スリランカの名建築家、ジェフリー・バワの建築群を意識しながら、日本の伝統美にオリエンタルモダンを掛け合わせ、訪れた人を魅了するようなエキゾチックな世界観を表現します。
大きな庭と水平に伸びる平屋の佇まい。この屋敷が持つ格式高さと風情を後世に残すため、外装は雨漏り箇所や腐食箇所の局所的な補修に留め、既存家屋をできる限り活かすように配慮しました。
その一方で、現代の生活様式にそぐわない内装には大きく手を入れています。
間仕切りを取り払って大きなワンルームへと転換し、仕上げを一新。
緻密なディテールと素材選びによって、空間のトーンを丁寧にコントロールし、魅力ある世界観を生み出します。
さらに大事なアップデート要素として、木突板で仕上げた新設のコアボリューム(下記図)に倉庫やトイレを収め、これは耐震補強要素を兼ねています。この新設のコアボリュームにより、築年数を重ねた建物の風格を保ちながら、新築にも遜色のない耐震性を実現しました。
小部屋の壁と天井を解体してあらわれた一体的な大空間をLDKに。
腰高の窓をフルハイトの大窓へとつくり替えることで、庭と建物をより強く結びつけました。
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AFTER
歳月の流れが蓄積して風合いが醸成された屋根や梁、柱といった要素は、古民家ならでは価値としてすべて既存のまま残しました。
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AFTER
ただ残すだけではなく、たとえば釘穴やホゾ穴が残る柱にはラタンを巻き、エキゾチックな雰囲気を生み出すと同時に、安全性を高めています。
一方、古びた壁と床は新設し、新旧の境目を曖昧に溶かすように情感ある茶色の樹脂モルタルで一体的な仕上げを施しました。
こうして完成したLDKは悠久の時を内包するような独特の雰囲気が漂い、40帖を超える大きな空間でありながら、包まれるような親密さを感じさせます。
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一方、かつて水まわりのあった北側エリアは、滞留する湿気を改善すべく屋根を残したまま外壁を解体し、屋外テラスへとつくり変えました。
ここは屋外と屋内をゆるやかにつなぐ空間となっており、飛び石沿いに歩みを進めると、その先に離れのバスハウスが見えます。
この離れのバスハウスは、廃屋だった元物置小屋を蘇えらせたもの。
梁柱や基礎は既存の物置小屋の設えを活かしています。
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リノベーション計画においては、既存家屋を積極的に活かすことがコストパフォーマンスを高める秘訣となります。
新旧の要素が融け合う、和×モダンの絶妙なバランス。
大きな庭へとつながるような開放感と、悠久の時に包まれるような親密さ。
こうして、築90年のお屋敷の物語性を継承する、鎌倉のオリエンタルハウスが完成しました。
歴史文化を背景に、素晴らしいポテンシャルを持つ古民家を、いかに現代に継承するか。
それには、何を大事に残し、何を大胆に変えるかを見極める力とセンスが問われます。
格式や風情、風合いなど、時間から生まれる価値を最大限に活かし、同時にコストパフォーマンスの観点から既存の要素を積極的に活用すること。その一方で、家屋の古さゆえの問題点や課題をしっかりアップデートし、現代の感性をもって魅力ある世界観を生み出すこと。最小の手数で、最大の効果を。
邸宅巣箱は、古民家の真の価値を次代に継承する、そんなリノベーションの可能性を追求しています。